第33回 電源システム技術シンポジウム 委員長インタビュー

TDK株式会社
エナジーシステムズビジネスグループ ゼネラルマネージャー 前山 繁隆
前山氏はTDK入社以来、電源一筋のキャリアをお持ちの電源のエキスパートです。
今回の電源システム技術シンポジウムの委員長として、プログラムの内容をご紹介いただきました。

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──現在の前山様のご所属を教えていただけますか?

現在、私はTDKの中のエナジーシステムズビジネスグループの責任者をしています。TDKの中には電源関係のビジネスグループが2つあります。1つがパワーシステムズビジネスグループで、こちらは産業機器関連の電源を担当しています。そして、私が担当しているのがエナジーシステムズビジネスグループです。エナジーシステムズビジネスグループは、自動車用の電源を担当しています。自動車といっても、いろいろありますが、最近、世間で注目されている電動車両(xEV)、具体的には電気自動車やハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド車、こういったものの電源システムの事業をおこなっています。

──TDKさんの中でも自動車関連は注力されている分野だと思います。その新技術を担当されているということですね。

そうですね。自動車用の電源は新しい分野ですね。私は入社してからずっと電源にたずさわってきました。お客様向けの設計と研究開発部門での新しい技術の開発の仕事を行ったり来たりしながらおこなってきました。

電源は人間で言えば、ちょうど心臓にあたります。心臓が全身に血液を送るように、電源も電気エネルギーを色々なユニットに供給しています。電源がなければ、電子機器は作動しません。そういった意味では、あまり表には出てきませんが、縁の下の力持ちのような存在だと思います。30年以上、電源の仕事をしていますが、一つの製品でこれほどの期間にわたって開発を継続する製品はあまりありません。電源は非常に息の長い製品だと思います。

──電源に求められることは?

電源に要求される項目の1つは効率です。いかに効率よく電源を供給するか。2つ目は、小型化です。3つ目に品質や信頼性。電源が壊れると、電子機器が使えなくなります。この3つは、求められるレベルは変わってきていますが、30年前も今も求められることに変わりはありません。

──電気自動車になると、電源に求められることが多くなると思いますが?

そうですね。電気自動車やハイブリッド車を私たちは電動車両と呼んでいますが、電動車両を拡大していく目的は、ご存知のように温室ガスである二酸化炭素を削減するためです。二酸化炭素の排出量は、基本的には自動車の燃費と相関があります。燃費を良くすると、二酸化炭素の排出量が減ります。いかに燃費を良くするかがポイントになります。そこでエンジンだけではなく、モータで動力をアシストする形でハイブリッド車が登場しました。エンジンを無くして、モータだけにしようとするのが電気自動車です。このような背景のもと電動車両の開発が進んでいます。

従来のガソリン車と比べて、決定的に違うことがあります。機械系の部品はいきなり壊れることはありません。だんだんとガタが出てきて、壊れていきます。ブレーキもそうですが、症状が徐々に現れていきます。しかし、電子機器はある瞬間、前触れもなく壊れます。これは大変なことです。昔であれば、車の調子が悪いなと思ったら、ディーラーに修理するために持っていきました。

ところが、今の電装機器を多用した自動車や電動車両は、突然壊れてしまう可能性があります。故障したらアラームを出して、すぐに修理に出してもらうようにしなければいけません。我々が開発している電源も、何か異常があっても、ある一定の時間は走るようにしなければいけません。

さらに言うと、今後、自動運転では、より安全性を求められますから、バックアップ電源を用意したり、あるいは冗長動作する電源を用意して、電力を供給する。そういったことを今後はやっていかないといけないかもしれません。

──今回の電源システム技術シンポジウムの特徴は?

電源システム技術シンポジウムは、電源を開発している人たち、それから、電源を実際に使う人たちが対象のシンポジウムです。どのような用途が、みなさんの間で議論されているのか。どのような要素技術が重要なのか。それを実現するためにどのような技術が必要なのか。その技術には、アプリケーションサイドの視点と電源サイドの要素技術の視点があります。この2つの視点から、どのようなセッションを設ければいいのかを、実行委員の間で議論してきました。

アプリケーションサイドで言うと、1日目のD1セッションの「未来を繋ぐ注目の電源システム技術」とD2の「電気自動車を支える充電インフラ技術の最新動向」ですね。D1がAI(人工知能)に関係し、D2が電動車両に関係するセッションです。ここがアプリケーションサイドです。今、話題のテーマです。

2日目には、D3「受動部品」、D4「ワイドバンドギャップパワー半導体の未来とSiC量産応用の現在」がありますが、このセッションは1日目のアプリケーションのニーズを実現するための重要な要素技術になります。具体的にD3はコンデンサ関連、インダクター関連について、D4は以前から非常に話題になっているSiC、それから酸化ガリウム、こういった要素技術を紹介していきます。

そして、最近になってスタートしたチュートリアル(D5とD6)ですが、実際に電源を現場で開発している人たちにとって、今、電源の世界でどのような新しい技術が展開されていて、それをどうやって設計に落とし込むのか、これを設計技術と言いますが、そのことについてシンポジウムの中で紹介していきます。前回、新規に設定してみたところ、非常に好評でしたので、今回は2本立てになっています。

D5の「チュートリアル:スイッチング電源、ステップアップのための回路設計とレイアウト設計」は基礎編的な内容で、D6「最先端、共振型電源の実践的設計法とシミュレーション活用技術」は、中堅の電源技術者に対するセッションです。要素技術をいかに自分の仕事に落とし込むかは、結構難しい話で、頭でわかっていても具体的にどうするかは難しいので、その辺りの助けになれば思っています。それがD5,D6のセッションですね。ここは現場の電源設計をしている人たち、あるいは電源開発をしている人たちが聞いていただければ参考になると思います。

──昨年のチュートリアルの参加者の方の傾向は、10年以上のキャリアを持った方の割合が高く、参加者のイメージとギャップがあったのですが?

いろんなケースがあると思っています。私のように入社してから、ずっと電源専門で開発をしている技術者はもちろんいるのですが、例えば、中堅技術者が今まで担当してきた製品とは異なるタイプのものを担当することになり、電源設計もみずからおこなうことになった、というケースもあるでしょう。必ずしも、入社してまもない20代の人だけではありません。

もう一つは技術者として、ステップアップを目指している人たちもいます。こういったシンポジウムで新しい技術、手法を取り込もうと参加されている。こういう方達もやはり30代、40代ですよね。

──参加される方へのメッセージをお願いします。

AIの世界や電気自動車に搭載される電子機器について、お客様のニーズや開発状況を知るチャンスはそんなにありません。実際にどのような新しい技術が使われているか、生の現場の技術、情報を知る機会は少なく、展示会に行って、展示されているものを見ただけではわからない。ですから、この貴重な機会に、ぜひ今回のシンポジウムに参加していただきたいです。発表される方々は一線級のエンジニアの方が中心ですので、聞き応えがあると思います。最終日のチュートリアルは、現場で電源を設計されている方々にとって非常に参考になり、ステップアップにも役立つ情報を得ることができます。こちらもぜひ参加いただければと思います。

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