第18回 熱設計・対策技術シンポジウム 委員長インタビュー

公立大学法人富山県立大学
学長 石塚 勝
「応用流体工学」「液体機械」「伝熱工学」を専門分野とする石塚氏は、熱設計・対策技術シンポジウムの開始時から運営に深く関わっていただいています。シンポジウムの歴史から技術者の現状まで幅広いお話をいただきました。

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──先生のキャリアを教えていただけますか?

元々は、東芝に19年間勤めていました。電子機器の冷却に携わっていました。

当時、電子機器の分野ではアメリカに遅れていましたが、日本でもその必要性が叫ばれるようになったときでした。私は小型のコンピュータを担当していました。もう今から35~6年も前の話です。

当時から冷却技術は活用されていて、例えば、列車では車載用のモータが熱くなるので、水を回して冷やしていました。

昭和30年代で有名なのが甲子園を舞台に野球中継です。甲子園の野球中継でテレビ用のカメラが使われていて、昔の製品なのでとても大きい。しかも屋外ですから、とても熱くなってしまう。当時は、氷を使って冷やしていたようです。

その頃から、冷却は大きな課題だったんですね。日本でも昭和30~40年頃に「冷却技術の革新に取り組まなければいけない」と、日本の学会においても研究が始まりました。平成になって、その動きがさらに加速されましたが、ちょうどその頃、私に日本能率協会から「熱設計・対策技術シンポジウムをおこないたい」と話がありお手伝いをしています。

──最初のシンポジウムから比べて、シンポジウムのテーマは変わってきていますか?

テーマは変わっていないと思います。なぜなら、冷却するためには水もしくは空気しかないからです。

コンピュータの能力が向上したことで、細かいデータが取れるようになりましたが、電子機器の内部は複雑なので、冷却についてはわからないことも多くあります。

そこで、私は30年前から、電子気内部の流れを熱回路網によるモデル化をしています。三次元の流れを1次元化して研究しているんです。市販の流体解析汎用ソフト(CFD)ですと、メッシュ数が100万から1億に細かくして解いています。

そうすると、解析で渦ができたというような話が出てきます。解けないものを解いたわけではなくて「その渦ができて、何を意味するのですか」という話になります。熱回路網というのは渦があろうとなかろうと、節点間に線を引いてしまいます。「1℃や2℃くらいの温度差は無視しなくても良いでしょう」ということになります。

熱についての計測技術は昔からありましたが、今日ではコンピュータで精度の高い計算をすることができるようになりました。従って、計測も細かくおこなう必要があります。

CFDコンピュータのソフトがもの凄く進歩していて、非常に細かく計算できます。しかし、一方で、残念ながら熱技術に長けた技術者はそんなにたくさんいません。減ってきています。

──私も、熱の技術者の人材が不足していると伺っています。いろいろな部品や装置と関係性があって、経験豊富な人でなければ担当できないというお話を聞きました。

いろんな知識を持った熱設計の技術者は、今までの経験から勘を働かすことができます。

例えば、「小さいファンを使った時はこれだけ冷えたから、もしかしたら、もう少し大きめのファンを使えばいいんじゃないか」というような勘をきかせるわけです。

ただ勘というのは技術ではないので、伝達できません。他人に伝承できるようにすることが必要です。そうすることができるようにするのが、このシンポジウムの目的の一つと言ってもいいかもしれません。

──学会でも、いろいろな技術の発表がありますが、学会とこのシンポジウムの違いは何だと思いますか?

学会では、その発表が本当に正しいのかを証明をするために何ページもある資料を作ります。このシンポジウムは「こうやったら、こういう結果になりました」という内容を発表します。その違いがあると思います。

──シンポジウムの方が、どちらかというと「企業の人たちがその技術をどう活用できるのか」ということに注目していますね。

そうですね。ただ、それだけではいけません。やはり式や計算といった数学的な証明も必要です。コンピュータも必要です。

難しいことをできるだけコンピュータで「見える化」していく。それが今の技術開発の目的です。技術開発もこのシンポジウムの目的と言っていいでしょう。

昔と違うのは、「見える化」がキーワードになるというところです。できるだけ見える化して技術で追い込む。ですから研究者もいて、技術者もいる。技術者がある結果を求めるのなら、研究者は何故そうなるかを求める。これが本来の目的なのです。

しかし、熱は見えません。電気には通電させるための線が必要ですが、熱は見えない。見えないものを見える化することが必要になります。見えないものを見える化するという技術が求められますし、難しいことを易しくするという見える化もあります。熱があっても、目で見ただけではわかりませんが、手で触ると熱を確認することはできます。そこが大事なポイントです。

──先ほど熱の技術者がだんだん減っているというお話がありましたが、見える化などに取り組むことで、企業の熱の担当技術者を育てていくことが必要ということですね。

人が育ちにくい状況ですが、育っている企業もあります。熱に対して、興味を持ってくれる人が増えることを期待しています。

──解決することをとても面白いと思うことや、人から刺激を受けて「こういう技術者になりたい」と思う気持ちが重要ですね。社内外で人脈を増やして交流することも大切なのかもしれないですね。

委員会に参加していただいている方や発表いただく方とこのシンポジウムを通じて、集まることができて、とても嬉しいです。このような仲間みんなで開催していることにとても意味があると思います。

──熱設計・対策技術シンポジウムの委員会での議論や進め方は、非常に特徴的だと思います。基本的な質問に戻りますが、そもそも、ものづくりにおける熱設計とはどのようなものでしょうか?

地味ですが、実はものづくりを根幹で支えているのが、熱設計とEMCだと思います。熱はいろんなものに対して、広い意味で関係しているからです。

──最後に、先生はこの熱設計・対策シンポジウムが最終的にどこを目指すべきだと思ってらっしゃいますか?

新しいテーマにも挑んでみたいのですが、集客が難しいですね。本当は、2年に1回ずつワンセッションでも、さらに新しいテーマがあるといいと思っています。

今はたくさんの方にご参加いただいていますが、昔はもっと少なかったんです。計測を勉強するために、参加していただける人がたくさんいらっしゃいますが、10年前には計測の大切さをうたっても、参加者が少なかった。他のシンポジウムでは40名くらい参加者がいるのに、18名程度の時もありました。

──新しいテーマは研究している人が少ないので、どうしても少なかったんですね。

本当は、企業にそういう先端技術を鵜の目鷹の目で探している人がたくさんいれば一番良いと思いますが、そうではないですからね。

ただ、これは必要だという啓蒙的な要素は、将来に向けて常に持っていなければいけません。熱に関しては、まだ全部を伝えきれていないと思います。今後も新しいテーマが見つかれば、シンポジウムの場で「こういうテーマが必要だ」と皆さんに伝えていきたいと思います。

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