第32回 EMC設計・対策技術シンポジウム 委員長インタビュー

九州工業大学
学習教育センター 嘱託教育職員 教授  桑原 伸夫
EMC設計・対策技術シンポジウムで、委員長を務めていただいている桑原氏に今回の講演内容、そしてEMCの最近の動向について、インタビューをおこないました。

【インタビュー記事(PDF)】TECHNO-FRONTIER 2018 EMC設計・対策技術シンポジウム
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──今回のEMC設計・対策技術シンポジウムの特徴はどんなところでしょうか?

テクノフロンティア技術シンポジウム全体が、メカトロやパワエレなどの分野の色合いが強い催しですので、私のプログラム企画の考え方としては、従来のいわゆるEMCと呼ばれてきた分野を少し絞って、メカトロやパワエレなどに関連するEMCのテーマを増やすようにしています。その結果でしょうか、例年目標数のお客様に参加頂いていますので、私自身も安心をしているところです。

今回の聞き所としては、やはり自動車関連ですね。日本の大手自動車メーカーの方からのEMCに関する発表は、大いに参加者の関心を集めると思いますが、今回はトヨタ自動車さんとSUBARUさんにG1セッション「ADAS: 高度運転支援システムのEMC」でご発表頂く事を楽しみにしています。

──ここ数年、自動車関連のテーマには特に多くの参加者が集っていますね。

自動車については、開発はもちろんですが、生産についても日本国内でかなり行われていますからね。国内で生産しているということで、影響を受ける関連企業の方がたくさんいらっしゃるのではないかと考えています。

──EMC技術の最近の動きはいかがですか?

以前は、BtoCのカスタマー向けの技術が、日本の中でも、特に一生懸命に取り組まれていました。例えば、パソコンや家電製品ですね。ただ、今はそういった製品の生産は海外に移り、日本の企業の多くは、BtoBのビジネスに移行しています。BtoB製品は高い性能を要求されるけれども、生産量が少ないものも多くあります。BtoC製品より、EMC対策にコストをかけることは可能ですけれども、経済的に対策を施す技術が必要なことは間違いありません。また、EMCは信頼性を担保するための重要な技術です。多用途に使われる電子機器の汎用EMC技術をこれからどのように開発していくのか、そこが課題になると思います。

特に、このシンポジウムで取り上げる自動車や、パワエレ機器ですね、これはもともと汎用製品というよりは長時間に渡ってインフラを支える大事な製品です。EMC技術が重要視される代表的な例だと思います。

──EMC技術の重要性とはどういうところですか?

国際標準の観点から、厳格な条件が求められている点が挙げられると思います。エミッション(emission)は多少、規格を外れても製品の性能が変わるわけではありません。ただ、周りには迷惑をかけるという意味での問題は生じます。

それで国際標準が発行されて、日本でも自主規制されているわけです。イミュニティ(immunity)については販売する製品の品質に関わっています。製品の品質から考えた場合、外来のノイズに対してどのような対策を行うかが重要な問題になってくるんですね。このEMC設計・ 対策技術シンポジウムでもそういう話をしたいのですが、品質に関する話は各企業の開発のノウハウに関わることですので、なかなか話して頂けない面があり、シンポジウムのこれからの課題です。

──製品の品質や設計の点で、EMCに関わる事で大きな課題があるわけですね。

特にイミュニティについては、どこかで取り上げたいと思っているのですが、難しいですね。学会でいろんな方にお願いしても、イミュニティ対策のノウハウのところは、設計デザインに直接関わってきますから、話して頂くことができません。例えば、カーナビですとタッチパネルがありますよね。車内は静電気だらけですから、タッチパネルは普通であれば、誤動作するはずですが、触っただけで動作が変わってしまったら、お客さんは怒ってしまいます。そのため、タッチパネルにはかなり静電気対策を行っているはずです。しかし、どのような対策を行っているかについては話して頂けません。イミュニティは規格を満足しているといった言い訳はお客様には通じない場合があります。ユーザーの要求に対応してどれだけ品質を高めるかが各企業の腕の見せ所になるわけです。

──これからのEMC技術の進展はどのような方向に行くのでしょうか?

私自身は開発の先端にいる専門家ではありませんので、推測でしか言えませんが、例えば自動車関連でいえば、自動車の開発には膨大な費用がかかるのですが、開発コストと期間の削減のためにシミュレーションの活用を重要視しているようです。自動車の衝突シミュレーターはかなり出来上がっているようですし、自動運転のシミュレーターもあるようです。自動車関連への活用から、EMCのシミュレーターは今後大きく発達するかもしれません。また、パワエレは高効率ものを言いますので、それに関わる技術がこれから出てくるかもしれません。

──設計段階で使われる技術の進展に期待が大きいということですね。

新しいデバイスが出てくれば別ですが、今年のEMCシンポジウムを見てみると、デバイスの話題がありません。SiCや窒化ガリウムなどを使ったパワエレ機器は開発されていますが、今回はそれ以外のデバイスの話題が出てきませんでした。ということは、みんなの認識がデバイスは出揃ったということなのかもしれません。今回、テクノフロンティアの中で、IoTの話題が出ていますが、これはもしかしたら今後EMCに関わってくるかもしれません。IoTはあらゆるものをつないで様々な機能を果たすわけですよね。その中で通信の信頼性に関わるところがEMCに関係してくる。誤動作とは言わないまでも、ノイズでパフォーマンスが落ちることも考えられます。

そういうことで、次回はIoTをテーマに取り上げてみてもいいかもしれませんね。どのくらいお客さんが来てくれるかわかりませんが(笑)。

──このシンポジウムは技術者間の情報交流が重要なねらいなのですが、参加いただく皆さんにメッセージをいただけますか?

私自身は「これからも日本の製品には、より高い品質を維持してほしい」という思いを持っています。私が子供の頃は「日本製よりも、ドイツやアメリカの製品の方が高品質」というイメージがありました。それを日本の諸先輩方が努力されて、世界の製品に肩を並べるほどの品質になりました。ですから、その品質レベルをこれからも継続して維持していただきたいと思っています。

最近でこそ減りましたが、昔は、日本のロケット発射は失敗することが多くありました。航空機についても純国産はなかなか実現できないという話を聞いています。そういった分野の最先端の技術はアメリカやヨーロッパに比べるとやはり遅れを感じています。でもこれからは、そういった非常に高度な技術を要するところでも、日本の製品がどんどん使われるようになってほしいと思っています。

工作機械やロボットの分野では日本の製品が高い評価を受けています。これはこれまでの地道なものづくりによる成果だと思います。日本の国民はコツコツやるのが好きな民族であり、地道なものづくりに向いていると思っています。私は、日本の技術者がその持ち味を活かして、各分野で世界的に有名なブランドをこれからも造り続ける事が出来るように願っています。

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