意外と知らない数字・単位・記号の決まりごと|エンジニアのための伝わる技術英語:第6回

いざ英文を書くときに意外と迷うことが多いのは、数字の書き方です。前回は、「more than=以上」が誤訳になるパターンをいくつか紹介しました。同じ「以上」の書き換えでも、「or more(数量、容量、金額、程度など)」「or greater(大きさ、数量、容量、範囲など)」「or larger(形、広さ、面積、範囲など)」など、何について述べるかで表現が異なります。
「その粒子は7μm以上の径を有する」
The particles have a diameter of 7 μm or greater.
 ここでは粒子の径、つまり大きさについて述べているので「or greater」を用いましたが、どの場面でどの表現を使うかは、その都度、辞書を引くことをお勧めします。
 さて、上記の文章にはもう一つ注目してほしい箇所があります。和文と英文では、ある小さな違いがあるのですが気付いたでしょうか。
  実は、数字と単位記号の書き方が異なります。和文の「7μm以上」は「7」と「μm(マイクロメートル)」を続けて書いていますが、英文では「7 μm」と半角スペースが空いています。「2 kg(キログラム)」「50 GB(ギガバイト)」「100 V(ボルト)」など、単位記号と数字の間はスペースを空けて書くのが英文のルールです。ただし、パーセント(%)、温度(℃、℉)、角度(°)、通貨($、\)などは例外で、「15.5%」「30℃」「86℉」「45°」「$19.90」「\2,000」とスペースは空けません。
 では、記号を使わずに単位をスペルアウトして書く場合はどうでしょうか。
「このサンプルは2キログラムある」
This sample weighs two kilograms.
This sample weighs 2 kilograms.
 単位をスペルアウトして書く場合は、数字のスペルアウト(one, two, three,…)、算用数字(1, 2, 3,…)のどちらでも表記可能ですが、単位記号を使う場合は数字をスペルアウトせず、「このサンプルは2kgある/This sample weighs 2 kg.」と算用数字で書きます。なお、小数は「2.5 kg」「2.5 kilograms」など必ず算用数字で書きます(図1)。

図1 単位と数字の書き方

1~9はスペルアウトし、10以上は算用数字
 技術英語のセミナーでは、数字のスペルアウトに関する質問も多く出ます。大学や出版社が発行するスタイルガイドによって違いはありますが、通常、1~9はスペルアウトし、10以上は算用数字で書きます。
「パソコンを10台以上用意してください」
Prepare more than nine PCs.
Prepare 10 or more PCs.
Prepare at least 10 PCs.
 ただし、 英文は大文字で書き始めるというルールに則り、10以上の数字でも文頭にあればスペルアウトするのが一般的です。
「日本の高校生のスマートフォン保有率は90%である」
Ninety percent of high school students have a smartphone in Japan.
 プレゼンテーションのスライドなどスペースが限られている場合は、見やすさや簡潔さを優先させ、文頭が算用数字のこともあります (図2)

図2 スライド上では算用数字を文頭に置くことも
注)グラフは架空のデータです  The graph does not represent actual data. 

日本語にはない句読点の
「:」(コロン)と「;」(セミコロン)

 数字のほかに迷いやすいのは「:」(コロン)と「;」(セミコロン)です。この二つは句読点の一種ですが、対応する記号が日本語にはありません。

 コロンは、「=」(イコールサイン)と同じと考えるとわかりやすいでしょう。左にあるものの内容を右で詳しく説明したり、具体例を並べたりするときに使います。コロンでつないだ文章は、「すなわち」「それはつまり」と入れても意味が通ります。

We reached an unexpected conclusion: the data was irrelevant.
「我々は、予期せぬ結論に達した。(すなわち)データが見当違いであったという結論である」

The following metals were detected: cobalt, nickel, zinc, and gallium.
「検出された金属は次の通りです。(それはつまり)コバルト、ニッケル、亜鉛およびガリウム」

 一方、セミコロンは「,」(カンマ)の親玉と考えるとわかりやすいでしょう。カンマは文章の区切りを示しますが、セミコロンにはその区切りを「はっきり示す」という機能があります。カンマは短いポーズ、セミコロンは長いポーズです。「溜め」や「余韻」が入るので、結果として前後の文章の関連性がより強調される効果があります。原因と結果、理由と結論、というように順接の場合もありますし、予想とそれに反する実際の結果、というように逆接の場合もあります。

 カンマは「区切る」だけで「つなげる」力はないので、2つの文章を接続する際はandやbutなどの接続詞が必要です。セミコロンは「区切りながらつなげる」ことができるので、接続詞は不要です。

Some gases are heavier than air, and other gases are lighter.
「空気より重い気体もあり、空気より軽い気体もある」
(2つの文章をカンマで区切り、andでつないだだけ。カンマはなくてもよい)

Some gases are heavier than air; other gases are lighter.
「空気より重い気体もあれば、空気より軽い気体もある」
(セミコロンを使うことで溜めが入り、上の例よりも2つの文章の区切りがはっきりして対比の雰囲気が出る)

こうして、順接か逆接かを明示
 順接か逆接かを明示したい場合は、セミコロンと連結詞(therefore, thus, howeverなど主に副詞)を合わせて使います。
We intend to reinforce the building, but the plan is not under way.
「我々は建物を補強するつもりだが、計画は進んでいない」
(2つの文章をカンマで区切り、butでつないだだけ。カンマはなくてもよい)
We intend to reinforce the building; the plan, however, is not under way.
「我々は建物を補強するつもりだ。しかしながら、計画は進んでいない」
(セミコロンを使うことで溜めが入り、上の例よりも2つの文章の区切りがはっきりしてもったいぶっている感じが出る。howeverにより、逆接の関係も明示された)
 また、列挙する語句にカンマが含まれていて、カンマを使うと文章の境目が視覚的に分かりづらい場合にもセミコロンを使用します。
The cables come in three combinations: red, green, and yellow; black, white, and gray; and orange, blue, and pink.
「ケーブルは、赤/緑/黄、黒/白/灰、オレンジ/青/ピンクの3色の組み合わせで提供されます」
コロンとセミコロンでスライドがすっきり
 コロンとセミコロンを使うと文章の構造をすっきりと示せるので、プレゼンテーションのスライドやマニュアルに効果的です(図3) 。
  しかし、使い方を間違えると、大きな誤解の原因になります。コロンとセミコロンでは文意が大幅に変わってしまうからです。

図3 スライド上のコロンとセミコロンの使い方
出典:川合ゆみ子、『技術系プレゼンテーション教本』、日本工業英語協会、2013年.

・コロンを使った文章
We reached an unexpected conclusion: the data was irrelevant.
「我々は、予期せぬ結論に達した。(すなわち)データが見当違いであったという結論である」
・セミコロンを使った文章
We reached an unexpected conclusion; the data was irrelevant.
「我々は、予期せぬ結論に達した。データが見当違いであった(からである)」
 技術英語の3C(Correct, Clear, Concise)のうち最も重要なのはCorrect(正確)です。情報が正しく伝わってこそ、文章の存在価値があります。迷った場合はコロンやセミコロンを使わない、というのも現実的な判断と言えます。

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