「できる」に違い、canはポテンシャルでwillは意思|エンジニアのための伝わる技術英語:第4回

あなた 「あの製品、仕様が変わったからさ。設計変更しなきゃいけないんだけど」

部下 「……月末までにできます」

 このような会話が交わされたら、おそらく部下は「厳しいなぁ」と思いながらも図面に向かってくれるでしょう。あなたも月末までに仕上がるものと期待するはずです。

 よくある(?)仕事のワンシーンですが、海外ではこの呼吸が通じずに困っている人もいます。

日本能率協会がまとめた『ASEAN地域報告書』に、
「大丈夫、できます、と言っていたのに、いつまでたっても指示したものがあがってこない」
「現地スタッフには、ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)が通じない」
というタイ駐在の日本人マネジャーの悩みが載っていました。

 日本企業が海外で事業を展開していくには、現地社員の力を活かすマネジメントが必要です。では、そのためのコミュニケーションとはなんでしょうか?会議やEメール、現場指導などやることは日本と同じですが、その多くは英語で行われているはずです。現地採用の課長や部長には、日本人より流暢な英語を話す人も大勢います。

 ここで先ほどの「できるといったのに、やらない」問題を英語の視点から考えてみると、冒頭の会話とは少し様相が違ってきます。

Manager(You):
“We need to have the circuit design modified according to the new specifications.”
「新仕様通りに回路設計を変更する必要があるのだが」

Engineer:
“We can do it by the end of the month.”
「月末までにできます」

 さて、エンジニアは新しい図面をつくるでしょうか?返答したのが英語に慣れた外国人なら、その可能性はかなり低いといえます。ここに「canは“できる”」と覚えた中学英語の落とし穴があります。

I can swim.
「わたしは泳げます」

 このサイトを見ている読者の方であれば、どんなに英語が苦手でもこの英文が分からないことはないでしょう。しかし、このcan、「できる」とは言っていても「やる」とは言っていないのです。泳ぐ能力があるのと、いま泳ぐかどうかは別問題。canが意味するのは、あくまで能力や可能性です。そこで先ほどのエンジニアの返答を見直すと、

“We can do it by the end of the month.”
「月末までにやる能力があります」「月末までにできる状況です」

という解釈になることが分かります。「やる」という意思はそこに含まれていません。

 では、月末までにやってもらうには、どうしたらよいでしょうか。「技術英語の3C」から、明確(Clear)な表現と正確(Correct)な単語に直してみます。

婉曲な依頼は失敗の元

 「我々にはそうする必要がある(だから、やってくれ)」というのは、日本人特有の婉曲な依頼表現です。同じ言語感覚をもっているならともかく、外国人相手にははっきり頼んだほうが失敗がありません。「~する必要がある/We need~」ではなく、「~できますか/Can you~?」と伝えましょう。

「月末までに、新仕様通りに回路設計を変更してくれるか?」
“Can you modify the circuit design according to the new specifications by the end of the month?”

と聞けば、依頼が受け入れられるかはYes/Noで示されるはずです。このやりとりで「Yes, we can do it./はい、できます」という返答なら、設計変更してくれるでしょう。そこでダメ押し。「Then, please. /じゃあ、頼む」としておけばさらに確実です。

 また、あなたが答える側であれば、canと言った後で、意思を示すwillでフォローアップしておきましょう。

Yes, we can. We will.
「できます。やっておきます」

 「あれ? willでフォローアップになるの?」と思った人は、もう一つの中学英語の落とし穴にはまっています。「will」を「未来の予定/~するつもり」と習った方は多いと思いますが、はたしてこの「つもり」、いったいどのくらいの確度だと思いますか?

 正解は「100%」です。上の文章なら、「かならず月末までにやります」という強い意思を示したことになります。日本語で「~するつもり」と言った場合、「やろうとは思っているけどね、まだ先の話だから」ということがありますが、その気持ちで「We will~」と言ってしまうと、またしてもトラブルになりかねません。その場合は、可能性のcanを副詞「probably/おそらく」などで修飾しニュアンスを伝えます(図参照)。

判断できる時もありますが、「できる」と「can」、「つもり」と「will」の間には、ズレがあることを覚えておきましょう。日本人同士の暗黙の了解や、あうんの呼吸をそのまま英語に持ち込むと、コミュニケーションギャップのもとになってしまいます。

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