そのカタカナ英語では通じません|エンジニアのための伝わる技術英語:第3回

今回は、単語テストから始めます。出てくるのは、技術系の方が仕事で接することが多い用語です。正確なスペルで書けるでしょうか。

ロットから「検体」を抜き出しなさい。
Pick out (s   ) from the lot.

亀裂や「歪み」が生じていた。
Cracks and (d   ) were found.

その方法だと「歩留まり」が大きく違ってくる。
The method makes a great difference in the (y   ).

「焼き入れ」と焼き戻しは数回繰り返される。
(Q   ) and tempering are repeated several times.

半導体の電気特性は、その「純度」に応じて大きな違いが出る。
The electrical properties of semiconductors depend very much on their (p   ).

これらの問題は、工業高校、高等専門学校、および大学1~2年生を想定した「工業英検」3級・4級のテキストから引用しました。正解は順に、「検体/specimen」「歪み/deformations」「歩留まり/yield」「焼き入れ/quenching」「純度/purity」です。

 私たちは学校の授業や受験勉強で英語を学んできたはずですが、そのなかで一体どれほど科学技術に関する単語が出てきたでしょうか。語学習得の基礎として、語彙を増やすことは大切です。

 さて、分からない単語は調べればよいのですが、実は「分かっているつもり」の単語の方が厄介です。

 例えば、一般に日本語では、壁についている電源をとるための差込口を「コンセント」と言います。プラグと混同されがちですが、差込口を取ることはできませんので、「節電のためにテレビのコンセントを抜いて」などの言い回しは奇妙といえます。しかし、気を付けてほしいのはそこではありません。

 そもそも英語の「consent」は「同意、感情の一致」という意味で、日本語でいうところの「コンセント」の意味はないのです。電源をとるための差込口は「power outlet」、壁についていれば「wall outlet」です。前回(第2回)の最後に出題した「コンセントに触ると危険です/Touching the consent is dangerous」の誤りは、和製英語にありました。正しくは、「Touching the power outlet is dangerous」です。

 このような和製英語にまつわる、気付きにくい誤りはあちこちで見られます。例えば、フロントガラスは「windshield」、プラスドライバーは「crosshead screwdriver」など。特に自動車関係や工具類の用語に多いので注意が必要です(表参照)。

分野が違えば、略語の意味は異なる

 次に多いのは略語で生じる誤解です。例えば、「AC」と聞いてあなたは何の略だと思いますか。電気技術者が話をしていれば、「alternating current/AC交流」を指すかもしれません。しかし会計担当者なら「actual cost/実コスト」「average cost/平均費用」を思い浮かべる人もいるでしょう。ホテルの設備に関する説明文では「air conditioner/エアコン」の意味でよく使われます。

 略語で気を付けたいのは、文脈や読み手によって言葉の受け取り方が違うという点です。略語の使用は慎重に。特にプレゼンテーションの際は、聞き手が知っていること/知らないことを常に意識しながら話すようにしましょう。

 なお、技術英語のセミナーを開くと、「略語とスペルアウトはどちらを先に書くか」という質問が意外に多く出ます。一般には、「The World Health Organization (WHO)」のように初出時のスペルアウトのすぐ後ろに括弧つきの略語を書き、2回目以降は略語のみを使います。

 上述したように、日常会話に浸透したカタカナ英語(和製英語)は要注意です。英国人の同僚に「英語力のブラッシュアップのためにこのコラムを読んでいる」と言ったら、怪訝(けげん)な顔をされてしまうかもしれません。「ブラッシュアップ」は、日本語では「磨く」という意味で使いますが、本来の「brush up」は「服のほこりを払う=軽く手入れをする」というニュアンスです。英語力について使うと、「元々流暢な人が海外出張前にちょっと練習しておく」というような意味合いになりますので、技術英語のイロハを学ぶこのコラムとは相性が悪そうです。

 そのほか、「コストダウン(英語ではcost reduction)」「自分の仕事のキャパシティー(同ability)」「ノルマ(同quota)」「ベテラン(同expert)」など、通じないものが多数あります。カタカナ語は疑ってかかるくらいの気持ちで調べることを習慣にしましょう。

関連記事

  1. 「できる」に違い、canはポテンシャルでwillは意思|エンジニアのた…

  2. ベタ訳からコンパクトな翻訳へ|エンジニアのための伝わる技術英語:第1回…

  3. 意外と知らない数字・単位・記号の決まりごと|エンジニアのための伝わる技…

  4. 「おおよそ」の数こそ正確に|エンジニアのための伝わる技術英語:第5回

  5. 「伝わる英語」は日本語の吟味から|エンジニアのための伝わる技術英語:第…

  6. right/leftの指示が右・左を迷わせる?|エンジニアのための伝わ…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。