正確・明確・簡潔に、読み手にやさしい技術英語テク|エンジニアのための伝わる技術英語:第2回

前回は、技術英語のテクニック「3C」から、英文を簡潔(Concise)に書き換えた例を紹介しました。今回は、残り2つのCを加え、技術英語の基本を解説しましょう。

Correct(正確):誤りを取り除く

 技術英語の3Cのうち最も重要なのは「Correct(正確)」です。スペルミスや文法の誤りを取り除き、和製英語や業界特有の略語の使い方、国・地域による度量衡の表記などを正します。

 あなたが仕事で作成する文書は、開発予算を増やしてほしい、設計の意図通りに作ってほしいなど、読み手に要求を伝え、最終的には売り上げや利益を生み出すための文書のはずです。そこに誤りがあれば、大きな損失につながりかねません。以下の英文には誤りが1か所ありますが、見つけられるでしょうか。

「我々のチームは画期的な手法を発見したので、明日公表する予定だ」
Since our team has discovered an innovative technique, we will disclose tomorrow. (誤)

 英語には「自動詞(うしろに「何を」にあたる目的語は不要)」と「他動詞(うしろに「何を」にあたる目的語が必要)があると学校で習ったのを覚えているでしょうか。「公表する/disclose」は他動詞なので、「we will disclose tomorrow」では、「我々は明日というものを公表する」という意味になってしまいます。

 公表するのは画期的な手法(an innovative technique)ですので、目的語として、繰り返しを避ける代名詞「それ/it」を入れ、

Since our team has discovered an innovative technique, we will disclose it tomorrow.

が正解です。

 たった1語抜けただけですが、スペルミスや文法の誤りから「いい加減な文書を出す会社」「正確な表現ができない技術者」と、企業や製品、あなた自身の信頼が失われてしまうこともあります。文書全体の信頼性を高めるために、正しい(Correct)英語表現は必須です。

Clear(明確):曖昧さを取り除く

 技術に関わる文書は、誰が読んでも同じ内容に理解されるように書かなければなりません。映画や小説ではないので、情緒的な表現をしたり、含みを持たせて解釈を読み手に委ねたりする必要はないのです。明確に書くことで、正確さ(Correct)も向上します。次の英文の問題点を考えてみましょう。

Heat the sample sufficiently.
「実験試料を十分に加熱してください」

単語の使い方や文法に誤りはありません。しかし、あなたがこの指示を受けたとして、果たして正しく実行できるでしょうか。

 「十分に/sufficiently」では、「十分に長い時間加熱する」のか「十分な温度になるまで加熱する」のかが分かりません。以下のように具体的に書けば、読み手が作業を誤ることはないはずです。

Heat the sample for five minutes.
「実験試料を5分間加熱してください」

Heat the sample to 100℃.
「実験試料を100℃になるまで加熱してください」

 現在の機械翻訳では解決できない部分が、こうした和文の曖昧さです。英訳しても、活用できない技術文書では元も子もありません。伝えるべき内容を整理し、読み手を迷わせないよう明確に(Clear)書くことを心がけましょう。

Concise(簡潔):冗長さを取り除く

 正確・明確な文章を、英語を母語としない日本人が書く――。その時に使えるテクニックは、易しく短く表現することです。

 和文の語句を漏らさず訳す、受験英語で身につけた熟語・慣用句を駆使する。これでは一文が長くなり、文章の構造や単語の綴りなど、間違えるポイントが増えてしまいます。読み手は技術的内容を理解する前に、英文を解読するだけで挫折してしまうかもしれません。

「下記に、マザーボードについて簡単に説明します」
The following gives a brief description of the motherboard.

 上の文章は、「give a brief description of ~/~を簡単に描写する」という熟語を使い、長く複雑な英語表現となっています。しかし、「describe/説明する」という動詞を用いれば、

The following briefly describes the motherboard.

 「何が・何を・どうする」というはっきりした文章に書きかえることができます。簡潔に書くことで語数が減ってミスも起こりにくくなり、正確さ(Correct)が増します。また、短い文章からは、強く明確(Clear)な印象を与えることができます。

 必要な情報を分かりやすくまとめ、相手から反応を引き出す。要領を得ない文書は補足説明が必要になり、結果、あなたの仕事を増やしてしまいます。

 技術英語の3C(Correct, Clear, Concise)を意識し、読み手の労力を最小限にしましょう。情報を正しく伝えてくれているという実感が、読み手の信頼を生むのです。

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